医師賠償責任保険に加入していますか?
周りの医師や勤務先に勧められて入っている方も多いと思います。
しかし、本当に加入する必要はあるのでしょうか。
もし加入する場合、どのルートで加入し、支払い限度額はどのプランを選べばいいのでしょうか。
ここでは、私自身が加入する際に比較し、検討したことについて書いていきます。
はじめに
引用:日本病院共済会ホームページ
医師を対象とした賠償責任保険には、勤務医向けの「勤務医師賠償責任保険」と、開業医向けの「日本医師会医師賠償責任保険」、そして病院の開設者向けの「病院賠償責任保険」の3種類があります。
訴訟になったときに、患者側が賠償金を請求する先は「病院のみ」「病院+勤務医」「個人の病院やクリニックの理事長」の3通りです。
「病院+勤務医」が訴えられたときに、「病院賠償責任保険」の加入のみで「勤務医師賠償責任保険」は加入していない場合、勤務医へ請求分は勤務医自身が全額自腹で払わないといけなくなってしまいます。
そのため、勤務医は「勤務医師賠償責任保険」に加入しておくことをお勧めします。
ただし、病院が「病院賠償責任保険」に加えて、「勤務医師賠償責任保険」のオプションも同時に契約してくれている場合もあります。その場合は、勤務医が自分で保険に入る必要はありません。
また、常勤以外に非常勤でアルバイトをしている医師が多いと思います。アルバイト先のすべての医療機関が、非常勤医師用の保険にオプションで加入しているとは限らないので、やはり保険には加入しておくことをお勧めします。
このページで紹介するすべての医師賠償責任保険は、非常勤やアルバイト先での勤務も補償の対象となります。
おすすめのプラン
限度額は、基本的には1事故につき1億円のプランで十分です。
産婦人科、脳神経外科、外科などの「若い患者が後遺症を残してしまうリスクの高い科」で、特に手術や分娩を数多く行っている場合は、1事故につき2億円のプランに入っていると安心です。
それに対して、皮膚科、リハビリテーション科など、訴訟となるリスクの低い科であれば、1事故につき5000万円のプランで十分です。
迷ったらとりあえず1事故につき1億円のプランにしてください。
参考指標
上記結論に至った参考指標をまとめています。
医師が訴えられる確率については、以下の記事を参照してください。
また、プラン選択の根拠は以下の記事を参照してください。
加入方法
医師賠を扱っている保険会社は、損害保険ジャパン日本興亜、三井住友海上、東京海上日動火災保険です。
そして、加入経路は主に以下の4つです。
それぞれの加入経路、プランを見ていきましょう。
民間医局
プランごとの年間保険料は以下の通りです。
免責金額(訴訟でお金を払わないといけなくなったとき、自腹で払わないといけない金額の上限)は0円です。
産業医・学校医業務に起因する事故も補償の対象となります。自動でセットになっています。
上のリンクから詳細を確認することができます。
総合的に見ると、勤務医であれば民間医局経由での契約が一番オススメです。
学会
下記の学会に所属している場合に加入できます。
プランごとの年間保険料は以下の通りです。
同様に免責金額(訴訟でお金を払わないといけなくなったとき、自腹で払わないといけない金額の上限)は0円です。
ただし他と異なり、産業医・学校医の業務に起因する事故による損害は補償の対象外となります。
これをカバーするためには追加オプションで「産業医・学校医等 嘱託医活動賠償責任保険」をつける必要があります。年間保険料は上記プランに5000円追加が必要です。(勤務医1名あたり、支払い限度額は1事故1億円/期間中3億円)
また、「クレーム対応費用保険」がオプションとして別にあります。これはクレーム対応に関する相談が無料、それでも解決困難な場合は弁護士費用を補償というものです。普通は病院が間に入ってクレーム対応をしてくれるので、病院の管理者でなければ必要ないでしょう。
学会自体ではなく、株式会社カイトーが取り扱っており、左のリンクより詳細を確認することができます。
1事故1億円のプランは、民間医局よりも年間保険料が1000円安いですが、民間医局なら自動付帯になっている「産業医・学校医の補償」をセットにするとかなり割高になります。また、1事故5000万円、2億円のプランは民間医局よりも割高です。
日本医師会
誰でも加入できます。日本医師会へ入会することで保険が付帯されます。
損害賠償金の年間総支払限度額(最高限度額)は一律で、1事故1億円、保険期間中3億円です。
他と異なり、免責金額(訴訟でお金を払わないといけなくなったとき、自腹で払わないといけない金額の上限)が1事故あたり100万円となっています。勤務医にはこれは痛いですね。
産業医・学校医業務に起因する事故も補償の対象となります。自動でセットになっています。
会費は以下の通りです。
A①:病院・診療所の開設者、管理者及びそれに準ずる会員 ・・・126000円
A②(B):上記A①会員及びA②会員(C)以外の会員 ・・・30歳以下は39000円、31歳以上は68000円
A②(C):医師法に基づく研修医・・・21000円
医師会ホームページより詳細を確認することができます。
研修医は、日本医師会の保険に加入するのが圧倒的に安いです。ただし、免責金額が100万円生じることを心得ておく必要があります。
大学同窓会
大学同窓会の所属者のみが加入できます。
学会の条件とあまり変わらないものと思われます。
まとめ
勤務医は「医師賠償責任保険」の1事故につき1億円のプランに加入することをおすすめします。