患者が病院を受診したとき、どれくらいのお金を受付で払っているか知っていますか?
特に勤務医は患者負担について全く気にしていない場合も多いでしょう。
全部覚える必要はありません。ここでは大まかに金額を算出していきます。
はじめに
患者の自己負担の割合、CT・MRI・エコー・採血など検査の大まかな料金、先発薬と後発薬の大まかな薬価の違いを意識したことがありますか?患者から検査料金について聞かれたことはありますか?薬が高いと言われたことはありますか?
医師は、患者が支払う金額を少しでも意識しておくことをお勧めします。
なぜでしょうか。
以下の3つの理由からそう考えます。
- 健全な病院経営のため・・・必要な検査や投薬を行うことで病院の利益になり、それが医師の待遇・地位アップにつながります。
- 無駄な医療費抑制のため・・・一方、必要のない検査や投薬をすることで医療費の増大につながり、将来的な問題が生じてきます。
- 患者と良好な関係を築くため・・・お金を払っている患者側からすると、効き目がわからないのに高い薬を漫然と続けられたり、高い検査をしたのに結果説明がたった一言で終わってしまうと不信感にもつながります。
患者は直接主治医にお金について言及することは少ないでしょうし、見てもらっている立場上言いづらいでしょう。しかし、家族、友人、地域のかかりつけ医のうちでは「医療とお金」は必ず出てくる話題です。
値段の書いていないレストランに入り、勧められたメニューを料理写真も見ずに注文することがどれほど不安なことか。それで値段に合った料理が出てこなかったら、そのレストランにはマイナスのイメージがついてしまいます。
患者負担額を知ることで費用対効果がわかり、患者の立場に立った良い医療ができるようになります。
個別の薬剤、診療科について全て書くときりがないので、ここでは患者が200床以上の総合病院の内科や救急外来を受診し、院外処方で薬が出たときにかかりそうな料金を中心に書いていきます。
自己負担の割合
まずはカルテのどこかに書いてある自己負担の割合を確認しましょう。0割〜3割の記載があります。
引用:厚生労働省ホームページ(医療費の自己負担)
75歳以上は1割(現役並み所得者:年収約370万円以上は3割)
70〜74歳は2割(現役並み所得者:年収約370万円以上は3割)
70歳未満は3割
6歳未満は2割
生活保護は0割
その他https://ishazei.com/wp-admin/admin.php?page=wpcf7、居住地によって「子供医療費助成制度:一定の年齢まで自己負担上限あり、または0割」「後期高齢者福祉医療費制度(マル福):0割」などの制度があります。
自己負担1割か3割かの違いは大きいです。
診察代
診療報酬の1点=10円です。
初診
初診料282点・・・1割280円、3割850円
紹介状なしで受診した場合:選定療養費(保険適応外)・・・5000円以上
再診
外来診療料73点・・・1割70円、3割220円
他の医療機関に紹介したにも関わらず、引き続き受診した場合:選定療養費(保険適応外)・・・2500円以上
その他
処方箋料68点・・・1割70円、3割200円
時間外特例(救急病院、平日概ね6〜8時・18〜22時、土曜日概ね6〜8時・12〜22時)230点・・・1割230円、3割690円
休日加算(日曜、祝日、年末年始の6〜22時)250点・・・1割250円、3割750円
深夜加算(22時〜6時)480点・・・1割480円、3割1440円
※上記3つの時間外加算は初診の場合の点数
診察代についてのまとめ
処方箋を出すとして、一般外来なら初診で350点、再診で150点、救急外来なら日中は600点、夜間は850点くらいです。紹介状がないとそれに実費で5000円追加される場合があります。
検査代
インフルエンザ迅速検査
インフルエンザウイルス抗原定性(147点)+免疫学的検査判断料(144点)+鼻腔・咽頭拭い液採取料(5点)=296点・・・1割300円、3割890円
300点くらいです。溶連菌迅速も同じくらいです。
血液検査
末梢血液一般、血液像(46点)+生化学10項目以上(112点)+CRP(16点)+HbA1c(49点)+判断料(血液学的検査 125点、生化学的検査Ⅰ 144点、免疫学的検査 144点)+血液採取(30点)=666点・・・1割670円、3割2000円
項目にもよりますが、600点くらいにはなります。
胸部レントゲン
画像診断料(85点)+撮影料(68点)+電子画像管理加算(57点)=210点・・・1割210円、3割630円
200点くらいです。
CT
単純CT:撮影料(1000点)+画像診断料(450点)+電子画像管理加算(120点)=1570点・・・1割1570円、3割4710円
1500点くらいです。造影CTなら3000点くらいになります。
MRI
単純MRI:撮影料(1600点)+画像診断料(450点)+電子画像管理加算(120点)=2170点・・・1割2170円、3割6510円
2200点くらいです。造影MRIなら3500点くらいになります。
エコー
胸腹部エコー:530点
下肢血管エコー:450点
心エコー:880点
だいたい心エコーは1000点、その他は500点と覚えましょう。
内視鏡
手技料と薬剤料合計で、上部消化管内視鏡1300点、下部消化管内視鏡1700点。生検して病理に出すと追加で手技料(310点)+病理(860点)+判断料(150点)=1300点かかります。
文書代
診療情報提供書料250点・・・1割250円、3割750円
診断書(自費)・・・病院が設定するが3000円前後が多い。
介護保険の主治医意見書・・・新規、継続、在宅、施設で変わるが、3000円〜5000円程度。
簡単な文書であれば3000円程度が目安です。
薬代(2020年4月の時点)
高血圧症
先発薬・・・アジルバ20mg:140円/1T
後発薬・・・オルメサルタン20mg:30円/1T、カンデサルタン8mg:20円/1T
糖尿病
先発薬・・・ジャヌビア50mg:130円/1T、トラゼンタ5mg:140円/1T1、ジャディアンス10mg:190円円/1T
後発薬・・・メトホルミン250mg:10円/1T、ボグリボース0.2mg:10円/1T
脂質異常症
先発薬・・・クレストール2.5mg:50円/1T
後発薬・・・アトルバスタチン10mg:10円/1T
抗凝固薬
先発薬・・・リクシアナ30mg:400円/1T
後発薬・・・ワーファリン1mg:10円/1T
抗ヒスタミン薬
先発薬・・・ビラノア20mg:70円/1T、ザイザル5mg:80円/1T
後発薬・・・フェキソフェナジン60mg:20円/1T、エピナスチン20mg:20円/1T
薬局での支払い
調剤薬局では、調剤基本料+薬学服用歴管理指導料+調剤料+薬剤料を支払うこととなります。
病院前の門前薬局を想定すると、それぞれ25点+50点+80点+薬価=155点+薬価となります。
その他加算がつく場合もあり、薬代以外に薬局に支払う必要がある金額は150点〜となります。
薬代についてのまとめ
例外はありますが、昔からある薬の後発薬は10-30円/1T、最近よく宣伝を受けるような先発薬は100円-200円/1Tという認識で良いかと思います。
先発薬を使わない方がいいとは言っていません。必要なときは使うべきです。ただ、1日あたりの薬価が数倍〜数十倍することがあることも認識し、「それだけの価格に見合う効果、利便性があるかどうか」という費用対効果を見極めることが大切です。
MRは自社の先発薬の情報しか基本的には持ってきません。後発薬の選択は、「ガイドライン」をもとに行うことをお勧めします。
まとめ
患者負担額を知ることで費用対効果を意識し、患者の立場に立った良い医療を提供しましょう。