医師が患者に訴えられる確率はどれくらいでしょうか。
医師賠償保険に加入を検討する際に参考になると思い、調べてみました。
はじめに
医師は、患者や患者家族に感謝されることもあれば、憎まれることもあります。
治療がうまくいった場合は、感謝されるでしょう。治療がうまくいかなかった場合でも、誠意の伝え方次第で感謝されることも多いでしょう。
しかし、治療がうまくいかず、さらにこちらの誠意がうまく伝わらなかった場合、一定の確率で訴訟に発展することがあります。
自分がどれだけ必死に治療を行っても、患者や家族から不信感をもたれると訴えられてしまいます。
私の経験上多いのは、インフォームドコンセントを行った患者家族とはまた別の家族が出てきて、トラブルになることです。
ただでさえ医師は多忙なのに、訴訟に発展するとさらに多大な労力が必要となります。
私達医師の自己防衛のため、訴訟に対し身構えておく必要があります。
そこでまずは医療訴訟に巻き込まれる確率をざっくりと調べてみました。
医療訴訟に関する統計
裁判所ウェブサイトに、医事関係訴訟に関する統計が記載されています。
このデータをまとめてみました。
- ここ10年間(H20-29)で、1年間の医療訴訟の新規受付件数は約800件。
- 平均審理期間は約2年間。
- 最終的に判決に至ったのが約300件、和解が約400件、取り下げ50件。
- 認容率(原告側の請求が一部でも認められた割合)は、医療訴訟に限ると約20%。
- ちなみに通常訴訟(一般の民事訴訟)では、認容率が80%台前半。
- 診療科別割合は以下の通り。(内科:約190件、外科:約120件、歯科:約90件、整形外科:約110件、産婦人科:約60件、形成外科:約30件、その他:約200件)
引用:裁判所ウェブサイトhttp://www.courts.go.jp/
※形成外科には、「形成外科」と「美容形成」が含まれていると思われます。
医師数に関する統計
厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師調査」から医師数に関する統計を見てみます。
- 全国の現役医師数は約30万人。
- 主たる診療科別の医師数は、内科:約6.1万人、外科:約1.4万人、歯科:約10万人、整形外科:約2.1万人、産婦人科:約1.1万人、形成外科:約3000人、その他:約9万人。
※形成外科には、「形成外科」と「美容形成」を含めています。
訴訟率
上記のデータより確率を計算すると以下の通りです。
1年間に医師が訴えられる確率:訴訟件数800件/現役医師数30万人=0.26% (医師400人あたり1人)
診療科別の訴えられる確率:
内科 190件/6.1万人=0.31%
外科 120件/1.4万人=0.86%
歯科 90件/10万人=0.09%
整形外科 110件/2.1万人=0.52%
産婦人科 60件/1.1万人=0.54%
形成外科 30件/0.3万人=1%
その他 200件/9万人=0.22%
まとめ
形成外科(美容外科も含む)が訴訟率が高いようですが、それでも1年間で医師100人あたり1人の割合です。
内科であれば医師300人あたり1人の割合です。
なお、1年間に交通事故に遭遇する確率は、約0.7%(140人に1人)と言われています。
交通事故に遭うよりは少ない確率であることがわかります。